日本人銃撃事件から2ヶ月、マニラの治安に対する不安は今も続いています。フィリピン夜のラジオのVOKUです。僕自身、過去にスリに遭ったり、ひったくりで銃を向けられた経験もあります。だからこそ、銃の的にならないためにどうすべきかを、机上の空論ではなく現場で身につけた感覚として語れるつもりです。今回はヒットマン案件と強盗案件を切り分けたうえで、抵抗の是非、制限時間の見極め、そしてドアツードアという最強の防御策まで、実用的な原則だけを整理します。

まずヒットマン案件と強盗案件を分けて考える

「銃を向けられる」と言っても、その中身は二種類に分かれます。一つはいきなり撃ってくるヒットマン案件。これは何をしても避けられない種類の暴力ですが、結論から言えば普通の旅行者には基本的に発生しません。ヒットマン案件が起きるのは、ビジネス上の恨みを買って誰かの邪魔になっている場合、女性関係で大きく揉め事を抱えている場合、あるいは裏の金を抱えて歩いている大金持ちの場合に限られます。「8月の日本人2名の事件はどうなのか」と問われそうですが、調べてみるとあの方たちは普通の一般旅行者ではなく、特殊な背景を抱えていたケースです。一般の旅行者が観光や夜遊びだけで撃たれた事例は、調べた範囲では見つかりませんでした。

強盗対策の鉄則は「出せと言われたら出す」

本題は強盗対策です。基本は揺るぎなく一つ、「お金を出せ」「携帯を出せ」と言われたら、躊躇なく出す。それだけ。腕時計や財布が高価で、店の女の子にいい顔をしたい気持ちがあったとしても、3秒で命と物のどちらが大事かを判断する以外にありません。フィリピン人の強盗は体格が小さい者が多く、つい「抵抗できそう」と思ってしまいがちですが、これは絶対にやってはいけない判断。向こうはトリガーに指をかけている状態で、こちらが動いた瞬間に撃ってくる。柔道や合気道の心得があっても、飛び道具には無力です。「銃弾を避けて反撃した」式の武勇伝が出回ることもありますが、現実にはアニメの世界の話。命を賭けて試す価値のある場面ではありません。

制限時間と「交渉の余地」の有無

襲われた場所によって、こちらが取れる行動の幅は明確に変わります。人通りの多い場所で襲われた場合、相手の方にも余裕がなく、3秒以内に渡さなければ撃たれると思っていい。一方人気のない場所で襲われた場合は、相手に時間の余裕があるため、わずかながら交渉の余地が生まれます。「携帯だけは持って行かないで」と頼んで携帯を取り戻したケースも実際に聞きます。手渡しではなく地面に置く、目を合わせ続けない、刺激を最小限にする——これらが鍵です。逆に絶対にやってはいけないのが、抵抗・挑発・「ふざけんな」「俺は強い」のアピール。フィリピン人にもプライドはあり、刺激すれば撃ちます。撃つハードルは思っているよりも遥かに低く、彼らの中には「お腹なら撃っても死なないだろう」と本気で考えている者すら存在する。お腹でも普通に死ぬ、というのが医学的事実です。

ドアツードアという最強の防御

強盗は基本的に「人がいない、暗い場所」を選んで現れます。ゴキブリと同じで、明るく人通りのある場所には出てこない。とはいえ最近は人通りのある場所でも襲撃が起きるため油断は禁物ですが、それでも対策はシンプルです。ホテルからGrabで店、店からGrabでホテル——この「ドアツードア」を徹底するだけで、襲われる確率は劇的に下がります。さらに変な路地裏やスラムを避け、夜の単独行動を控えれば、まず狙われる場面そのものが発生しません。最も狙われやすいのは、「俺はこの辺りに慣れている」「ここの人は皆知り合いだ」と勘違いしているタイプ。僕もスラムを訪ねた経験はありますが、顔を覚えられているからこそ「自分は安全」とは絶対に思わないようにしています。むしろ向こうから見ればこちらは「ドバイの大富豪」レベルに見えていて、100万円程度ならまだ出せるはずだ、と値踏みされている可能性があると考えるべきです。

「撃つ理由を提供しない」という最終原則

撃つハードルは低い、と書きました。しかし基本的に銃は威嚇のために向けられているのです。撃てば大事になることは、強盗側も理解しています。発砲すれば警察が本気で動き、CCTVが総漁りされ、特別捜査班が編成されて逮捕に至る。撃たなければそうはならない。だから彼らも本心では撃ちたくないのです。つまり、こちらが素直に渡し、相手を刺激しなければ、撃たれることは基本的にない。逆に「変な場所に居る」「夜に単独で歩く」「抵抗する」「挑発する」「俺はベテランだと勘違いする」のいずれかで撃つ理由を提供してしまえば、その瞬間に状況は変わります。僕自身、ひったくりで銃を向けられた経験がありますが、その時もこのロジックで切り抜けました。狙われる理由を、こちらから差し出さない。それが何より確実な対策です。

結論:銃の的にならないために、撃つ理由を提供しない

危険を完全になくすことはできません。しかし、狙われる確率と被害を最小化する原則は明確に存在します。

  • ヒットマンは一般旅行者には無関係:恨み、ビジネス、女絡み、裏金が条件。
  • 強盗対策の基本:「出せ」と言われたら3秒で出す。命と物の天秤を即決する。
  • 抵抗・挑発は絶対禁忌:撃つハードルは思うより遥かに低い。
  • 状況による時間軸:人混みなら3秒、人気のない場所なら交渉の余地。
  • ドアツードア徹底:変な路地裏・スラム・夜の単独行動を避けるだけで激減する。
  • ベテラン勘違いが最も危険:顔を知られている=安全、ではない。

いま現地は警察が至るところに配備され、歴代でも最も安全に近い時期です。クリスマスシーズンに入ってさえ街は静か。来るなら今——それが現地で歩き続けてきた者としての一貫した結論です。