「銃を使った強盗が1つも捕まらない」——あるYouTuberの発言が現地に住む者として看過できず、徹底的にデータを調べてきました。フィリピン夜のラジオのVOKUです。SNSの声と公式の数字、そして街を歩く僕自身の肌感覚を突き合わせると、この発言が事実とどう食い違うのかが明確に浮かび上がってきます。マニラの強盗件数は前年比で大きく減り、解決率は90%を超え、9月のマラテ事件も既に容疑者が逮捕されている。数字に基づいて、噂の正体を一つずつ解体していきます。

強盗件数は前年比19%減、上半期に至っては32%減

まず数字から見ていきましょう。首都圏マニラの強盗発生件数は2025年に入ってから230件で、前年同期の283件と比べて19%減少しています。さらに、9月のマラテ銃撃事件が起きるよりも前の2025年上半期で見ると、マニラ市の強盗件数は72件。前年同期の93件と比べて約32%減という、公式データに基づいた明確な減少傾向が確認できる。「件数が増えている」と感覚で語る人の多くは、実際の数字を見ていません。僕自身も街を歩く現地の感覚として、去年の方が圧倒的に物騒だったと感じています。今年も多いと思っていたけれど、並べてみれば確かに減っているのです。

解決率91%、9月マラテ事件も既に逮捕済み

逮捕の実績を見ると、警察が本気で動いていることがさらにはっきり見えてきます。2025年上半期の首都圏では犯罪研究率(クリアランス率)約91%、解決率約76%。日本基準で見れば物足りない数字に映るかもしれませんが、フィリピン基準では大幅な改善です。個別事件でも、9月のマラテ路上強盗事件は25歳と23歳の容疑者2名が既に逮捕済み、日本人男性被害事件への関与も捜査中。さらに2024年11月から2025年5月の半年間だけで強盗・薬物関連の容疑者105人が逮捕されている。日本人狙いの一連の強盗には特別捜査班まで編成されていて、犯行グループの摘発も着実に進んでいます。日本人ですらフィリピンに隠れて捕まっている事例を僕は実際に知っているので、警察の本気モードは間違いなく現実です。

「捕まらない」という噂の本当の出どころ

ではなぜ「捕まらない」という噂が広がるのか。原因は二つあります。一つは被害届けが提出されないケース。「これぐらい盗まれただけだし、まあいいか」と諦めてしまえば、当然警察は調べようがありません。2023年12月のひったくり事件では「犯人の顔が分からない」という理由で通報を見送った例まで報告されています。もう一つがSNS上だけで訴えて終わるパターンです。TwitterやXに「やられた」と投稿するだけで警察には届けない。共感や反響は得られても公式データには一切反映されないため、結果として「未解決事件が多い」という錯覚だけが世間に残る。報告のない事件は、いくら起きていても統計上はゼロ。これが噂の正体です。

政府は「フェイクニュース」と明確に否定

この噂はフィリピン国内でも流れていて、「ドゥテルテ政権の頃より犯罪抑止力が弱まった」と感じている市民もいます。あるYouTuberに限らず、現地のSNSでも同種の言説が拡散されているのが現状。これに対してフィリピン政府と警察当局は「故障や根拠の薄い情報」「フェイクニュース」と明確に反論しています。Romualdez下院議長も「公式データでは犯罪は減少傾向、デマを拡散しないように」と国民に呼びかけている。感情論ではなく数字に基づいた政府側の反論は、現地で街を歩いている僕の肌感覚とも一致します

銃案件は本気で動く——だから捕まる

正直に言えば、政府発表の数字に多少の整形があるのではと僕も疑っていました。しかし何十%レベルの大規模な操作は、今のSNS時代では現実的に不可能です。隠そうとしても必ずどこかから漏れる。逆張りの気持ちで「銃強盗が捕まらない」発言の足を取りに行くつもりで本気で調べたのですが、未解決事件を探す方がはるかに難しかったというのが正直な感想です。捕まっていない事件はあるものの、その大半はマニラ外の田舎エリア。マニラで外国人を狙った銃強盗系は、調べた限り全体的に逮捕に至っている。銃を使えば警察は本気で動くのです。CCTVを総漁りし、特別捜査班を編成し、通報から5分以内の対応を徹底する——銃案件だからこそ捕まる、刃物や引ったくり程度の方がむしろ抜けやすい、というのが現場の実態です。

結論:噂の検証は数字とともに

「銃を使った強盗が1つも捕まっていない」というセンセーショナルな発言は、データに照らせば成立しません。感覚や噂で語るのではなく、数字を見て判断する姿勢が、現地に来る側にも求められています。

  • マニラ強盗件数:前年比19%減、上半期は32%減という公式データ。
  • 逮捕実績:解決率約76%、9月マラテ事件も既に容疑者逮捕済み。
  • 噂の正体:被害届けの未提出と、SNSだけの訴えが「未解決」を見かけ上膨らませている。
  • 銃案件は別格:大事になるからこそ警察が本気で動き、結果として捕まる。
  • 政府も公式否定:「フェイクニュース」と下院議長まで言及している。

クリスマスシーズンなのに今年は静か。警備が効いている証拠であり、来るならむしろ今——これが現地で歩き続けてきた者としての一貫した結論です。